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THEME 効果音を”構造”からモデリングする!

~アサルトライフル M4A1編~

M4A1
- アサルトライフルアクションシーン
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写真はもちろん実銃ではなく、M4A1というアサルトライフルを模したエアガンです。弾こそBB弾ではありますが、「実銃とほぼ同じ重さ」「金属素材の質感」「ボルトキャッチなどのM4A1と同じ機構」などホンモノにかなり近い特徴を持っています。今回はこのエアガンを通して、"アサルトライフル(M4A1)の音作り"をご紹介します。

アサルトライフルの音はどんな音で構成されているのか?

銃を手に取り、弾を発射するまでには銃特有のいくつかのプロセスがあります。それぞれのアクションを効果的に音で表現することで銃のサウンドらしさを強調します。アクションの流れは次のとおりです。

 

  1. 銃を手に取る

  2. マガジン(弾倉)をセットする

  3. チャージングハンドルを引いて初弾を装填する

  4. 銃を構えてターゲットを狙う

  5. セーフティレバーを解除する(4とほぼ同時タイミング)

  6. トリガーを引いて発射する

  7. 排莢されたカートリッジが地面に落ちる

 

このようなプロセスを経て弾は発射されます。各部の名称などは初めて聞くようなものもあると思いますので、写真も交えて後述しますね。また、これは初回の流れですが弾を撃ちきったあとは少し流れが変わります。

 

  1. 弾を撃ちきる

  2. 空のマガジンを抜く

  3. 新しいマガジンをセットする

  4. ボルトキャッチを叩いて初弾を装填する

  5. 銃を構えてターゲットを狙う

  6. トリガーを引いて発射する

  7. 排莢されたカートリッジが地面に落ちる

 

初弾の装填の仕方が違いますね。ボルトキャッチという機構がないものもあるようですが、M4A1ではこの機能が搭載されています。これらの音を再現することでアサルトライフルM4A1の音をモデリングします。それでは一つ一つ作っていきましょう。

1.銃を手に取る効果音を作るには?

まずは銃を手に取る音を作ります。単純にエアガンを手に取るだけでも良いのですが、そうすると次のような迫力のない音になりがちです。

▼エアガンを単純に手に取った音

エアガンを単純に手に取った音 -
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FPSのゲームなどで銃を拾うアクションは、素早く手に取るイメージなので多少アクセントが欲しいところです。銃のカチャッとした音を強調するために、わざと銃を勢いよく揺らしながら取りましょう。そうすると、次のようにガチャガチャ感が出て「勢いのある音」になりやすいです。また、このとき手袋をしながらすることもポイントです。激しく揺さぶるには素手だと痛い部分もあるので、手袋をすることで気にすることなく揺さぶることができます。

▼エアガンを揺らしながら手に取った音

エアガンを揺らしながら手に取った音 -
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これで銃を手に取る効果音ができました!

手袋で銃を揺らしながら取る

2.マガジン(弾倉)をセットする効果音を作るには?

次にマガジンをセットする音を作ります。マガジンとは弾倉のことで、このなかに前もって弾を何十発も装填しておくことで連射や弾の入れ替えがとてもスムーズにできるんですね。ちなみにマガジンというと雑誌がまっさきに浮かぶのですが、もともとの語源は「倉庫」という意味らしいです。面白いですね(笑)

M4A1マガジン

このマガジンはエアガン用なので中にBB弾を詰める形ですが、「ホンモノ同様のスチールプレス製アウターケース」と書かれていたので質感は実銃と同じようです。ただし、BB弾をつめるとカラカラと余計な音が入ってしまうのでマガジンは空にしておきます。

 

では、この状態でマガジンを挿してみましょう。何度か繰り返したなかで良い音だったのがこちらです。

▼マガジンを挿す音

マガジンを挿す音 -
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これでマガジンをセットする効果音は完了です。

3.チャージングハンドルを引く効果音を作るには?

マガジンをセットしてトリガーを引いても、弾は発射されません。なぜなら、マガジンにある弾はチャンバーと呼ばれる発射台のような場所に送り込まないと発射できないからです。チャージングハンドルはこのチャンバーへ弾を送るための部品です。チャージングハンドルを引くことで銃の中にあるボルトが連動して動作し、マガジン内の弾をチャンバーへセットすることができます。

チャージングハンドル

ただし、チャージングハンドルを引く動作は通常初回のみです。1発でも弾を撃つと、それと同時にボルトも動作して次のマガジン内の弾を自動的にチャンバーへセットするからです。これが連射できる理由なんでしょうね。

 

それではチャージングハンドルを引いた音を聴いてみましょう。

▼チャージングハンドルを引いた音

チャージングハンドルを引いた音 -
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なかなかいい感じなのですが、ライフルとしてはガコッとした重みと迫力が足りません。それもそのはず、このエアガンに搭載されているチャージングハンドルはギミック的なもので、本来の「弾を装填する役割」がありません。また、ハンドルの引ける後退量も本来の半分ほどで距離が短いため、音が軽くなっています。

 

ここで効果音的に迫力をつけたものがこちらです。

▼チャージングハンドルを引いた音(迫力付加)

チャージングハンドルを引いた音(迫力付加) -
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ガコッとした重みが出て弾が装填された雰囲気が強調されたのではないでしょうか。

迫力をつけるために足した音はコレです。

ドアノブ

そう、ドアノブです。(笑)

ドアノブのガチャっとした音って弾込めの音に似てません?ここではこの音を足して迫力を出してみました。

これでチャージングハンドルの効果音は完成です!

4.ボルトキャッチの効果音を作るには?

ボルトキャッチ

兵隊さんの射撃やFPSゲームの映像で、マガジンを撃ちきって新しいマガジンを入れた後に「銃の横を叩く動作」を見たことはありませんか?あれはボルトキャッチを押して初弾を装填する動作です。

 

役割としてはチャージングハンドルと同じなのですが、チャージングハンドルよりも素早い弾込めが可能になります。仕組みとしては、マガジンの弾を全弾打ち切るとボルトキャッチが跳ね上がり弾切れを知らせます。またこのとき、銃の中にあるボルトが後退したままストップするので、実質チャージングハンドルを引いたままの状態と一緒になります。

 

この状態で新しいマガジンをセットすると、あとはボルトキャッチを押してボルトを戻すだけで弾が装填されるので「引く動作」をカットすることができるんですね。そのため素早い弾込めが可能になっています。チャージングハンドル同様、このエアガンでは弾を装填したりボルトが連動する役割はないので押しても「ぽちっ」としか鳴りません(笑)

 

ボルトキャッチの音を作るには「ボルトキャッチを叩く音」と「ボルトが戻るときの音」で再現することができます。ボルトが戻るときの音は、さきほどのチャージングハンドルの効果音の後半部分を代用して、ボルトキャッチを叩いた音と混ぜたものがこちらです。

▼ボルトキャッチを再現した音

ボルトキャッチを再現した音 -
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5.銃を構えてターゲットを狙う効果音を作るには?

弾込めも終わり「サッ!」と銃を構えるときには、銃を手に取る効果音同様「カチャッ」とした音がよく合います。映画のワンシーンで「サッ!」と構えるときは必ず「チャッ!」「カチャッ!」と歯切れの良い音が鳴りますよね。あの音を入れることで動作が素早いことを強調しているんですね。

 

ここでもそういった意図のもと、銃を手に取る効果音のときと同じように銃を勢いよく揺らしながら手に取る効果音を使います。

▼銃を構える音

銃を構える音 -
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これで銃を構える効果音は完成です。

6.セーフティレバーを解除する効果音を作るには?

セーフティレバー

セーフティレバーは、銃の撃ち方を選んだりトリガーを引けなくして安全にしたりするための装置です。写真では、

 

  • SAFE トリガーが引けない安全状態。

  • SEMI セミオート。トリガーを引くごとに「1発」発射する。

  • AUTO フルオート。トリガーを引き続けることで「連射」する。

 

以上の3種類が選べるようになっています。(※実銃でもエアガンでも、撃つ直前以外は必ず「SAFE」に入れておくのが原則なのですが、文字が見えるようにあえて「SEMI」にしています。)

 

ほかにも、アメリカの民間用の銃だと「SAFE」と「FIRE」(撃たない、撃つ)の2種類しかなかったりとか、銃の種類によっては1回引き金を引くと3連射する「BURST」などもあるようです。ちなみに、日本の自衛隊だと、

 

  • 安全 ⇒ ア

  • 単射 ⇒ タ

  • 連射 ⇒ レ

  • 3点バースト ⇒ 3 

 

のように表記がカタカナになったりするようです。なんだかうまいこと「アタレ(当たれ)」になってますが偶然でしょうか(笑)面白いですね。

 

操作した時の音は、「カチッカチッ」と気持ちのいいクリック音が鳴る感じですね。

▼セーフティレバーのセレクト音

セーフティレバーセレクト音 -
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これでセーフティレバーのセレクト効果音は完成ですが、身近にあるもので「部屋の照明スイッチ」「ボールペンのクリック音」「携帯ゲーム機の音量スイッチやカード差込音」などいろんなもので代用できますよ!

7.トリガーを引いて銃を発射する効果音を作るには?

いよいよ大詰めの「発射音」です。発射音は、

 

  • 火薬が爆発して空気が圧縮、膨張する音

  • ブローバックによってボルトが素早く動作して次弾が装填される音

 

で構成されています。まずは爆発の音を用意しましょう。(爆発音の作り方はこちら

 

▼規模の大きい爆発音 ※音量が大きいのでご注意!

爆発音サンプル -
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ちなみにこの爆発音はこちらの素材集から引っ張ってきています。

この爆発音をそのまま使うとあまりにもイメージが大きすぎるので、ライフルの発射音に近づけるために音を加工します。加工のポイントはアタックを残してサスティンを小さくすることです。

爆発音フェード処理

このようにアタックを残して、サスティンを極端に落としてやると「バッフォォォォン・・」と瞬間的に空気が圧縮されたようなイメージを表現できます。

▼フェード加工した爆発音

加工した爆発音 -
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いい感じにアタックがつきましたね!

次にブローバックして素早くボルトが動作する音を作ります。単純にエアガンを空撃ちすると次のような音になります。

▼エアガンを空撃ちした音

エアガンを空撃ちした音 -
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金属的ないい音ですね!チャージングハンドルと同じ理由でやはり「ガコン」とした重みはないのですが、さきほどの低音豊富な爆発音と混ぜるのでこのまま使うことにします。

 

上記二つを混ぜれば、ライフル銃の発射音の完成です!

▼ライフル銃の発射音

ライフル銃の発射音 -
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混ぜる時のコツは、爆発音を少し抑え目にして銃本体の音が聞こえるようにすると、歯切れのよいライフルっぽい印象が強まります。連射時もアタック感が強調されて「タタタ!」というイメージに近づきます。

▼ライフル銃の連射音

ライフル銃の連射音 -
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また、M4A1の実銃では、1分間に700~970発を連射できるそうなので、1秒間では約12~16発の弾を撃てることになります。これはテンポ180前後で16分音符を連打するのと同じタイミングです。このサンプルではテンポ184で調整しています。

 

AK-47というアサルトライフルだと、600発/分というように連射のスピードは銃ごとに違っているので、この違いを出していくことで銃それぞれの音に個性を表現する要素になります。

8.カートリッジが排莢される効果音を作るには?

カートリッジとは、

 

「弾と火薬、薬莢、リム、雷管すべてをセットにしたものを1つのカートリッジ」

 

と呼びます。実包とも呼ばれます。つまり、カートリッジの中に弾が入っているんですね。マガジンの項目で、「弾を何十発も装填して」と書きましたが、実は正確には「カートリッジを何十発も装填して」となります。

カートリッジ

写真はカートリッジのレプリカです。M4A1ではこの5.56x45mmのNATO弾を使用するそうです。さきっぽのオレンジ色をした部分が「弾丸」です。そして金色の筒が「薬莢」、中には発射薬がつめこまれています。このカートリッジのおしりを撃鉄で叩くことで発火し、弾丸が飛んでいくんですね。

 

弾丸が飛んでいったあとは、空の薬莢だけが残ります。そのため、次の弾をセットするためにも空の薬莢を捨てなくてはいけません。これが、排莢口から薬莢が捨てられる動作になります。

排莢口

※カートリッジを置いているだけで、排莢時には本来は弾丸部分がありません。

 

この薬莢が捨てられたあとは地面に落ちることになります。地面がコンクリートのような硬い材質であれば「チン!」といかにも銃らしい音がします。ここではレプリカのカートリッジを使いますが、ネジなどを使っても代用することが出来ます。

ネジとカートリッジ

▼5.56x45mm NATO カートリッジを落とした音

5.56x45mm NATO カートリッジを落とした音 -
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これで薬莢が落ちる効果音は完成です!

9.各アクションを組み合わせて流れを作る

いよいよ最後の組み立てです!これまで作ってきた効果音を銃のアクションの流れに沿って繋げていきましょう。アクションの流れは、

 

  1. 銃を手に取る

  2. マガジン(弾倉)をセットする

  3. チャージングハンドルを引いて初弾を装填する

  4. 銃を構えてターゲットを狙う

  5. セーフティレバーを解除してセミオートにスイッチする(4とほぼ同タイミング)

  6. トリガーを引いて6発発射する

  7. セミオートからフルオートへスイッチする

  8. トリガーを引いて24発発射する

  9. 弾を撃ちきる

  10. フルオートからセーフティへスイッチする

  11. 空のマガジンを抜く

  12. 新しいマガジンをセットする

  13. ボルトキャッチを叩いて初弾を装填する

  14. 銃を構えてターゲットを狙う

  15. セーフティからフルオートへスイッチする(14とほぼ同タイミング)

  16. トリガーを引いて30発発射する

  17. 弾を撃ちきる

 

です。上記の流れを作った、アサルトライフルアクションシーン完成がこちら。

アサルトライフルアクションシーン

▼完成したアサルトライフルのアクションシーン

- アサルトライフルアクションシーン
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いかがだったでしょうか?このように音を分解していけば色んなアクションの表現が可能になりますよね!今回はアサルトライフルについてご紹介しましたが、ハンドガンなども別の機会でご紹介したいと思います。

 

今回はここまで。それではまた次回!

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効果音メモ

アサルトライフルに特化した効果音素材集を販売予定です。(https://www.ogawasound-online.com/assault-rifle)今回ご紹介したように、アサルトライフルの音をできるだけ分解したものを豊富に収録し、クリエイターの方がご自身で組み立てられるような効果音素材集を制作中です。素材集の情報についてはメールマガジンを通してメールでお伝えしますので、ご興味ある方は下記の「効果音情報を受け取るには?」からどうぞご登録ください。(^^)

OGAWA SOUND:小川

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それでは来週の「効果音の作り方記事」もお楽しみに!

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■特徴

 

  • 収録ファイル数は全159ファイル

  • アサルトライフルの音構造を細分化し、本物にせまるリアルなサウンドを演出

  • 発砲音はもちろん、構え、チャージングハンドルといった動作音も多数収録

  •  
  • 収録形式:96kHz32bit,48kHz16bit wavの2形式別に収録

  • 著作権使用料フリー(何度でもご使用いただけます)

  • 商用での利用可能(コピー、配布、素材販売は禁止です)

  • 全てOGAWA SOUNDによるオリジナル制作物ですので、安心してご使用ください

※実銃による録音ではありません。

 

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