HOW TO MAKE SOUND EFFECTS
効果音を探すのをやめ、
あなた自身で効果音を作ってみませんか?
THEME 映画寄生獣の1シーンを再現!セーム革を使ったグロテスクな効果音の作り方
映画寄生獣の効果音の作り方を見て
先日の水曜日(2015年4月15日)に放送された「笑ってコラえて!」はご覧になりましたか!?番組内では、映画「寄生獣」の効果音がどのようにして作られたのかをご紹介されており、大変刺激を受ける内容でしたね!映像を見ながら小道具で音を演じる”フォーリー”を焦点に、寄生生物が変形する音や銃弾を肉の盾で防ぐ音などを再現されていました。演じられていたのはフォーリーアーティストの小山吾郎さん。
番組内で特に気になったアイテムが「セーム革」です。セーム革は保水性が高くクルマの洗車などにもよく使われている素材だそうです。さっそく近所のホームセンターやカーショップを回り、私も手に入れることができました!セーム革でどんな音が出来るのか、番組で紹介されていたシーンを題材に私が試してみた過程をご紹介したいと思います。ちなみに今回の録音はZOOMのH6とステレオショットガンマイクSSH-6を使用しています。
お題①.肉の盾を構える効果音を作る
最初は「飛んでくる銃弾に対し、人間の姿をした寄生生物が左手を盾に変形させて構えるシーン」です。映像では構えた一瞬のうちに、上半身を覆うほどの肉の盾が現れます。その映像に対して小山さんは水分をたっぷり含ませ、軽く絞ったセーム革を使用されていました。セーム革の端と端を持ち、一気に「パンッ」と張る動作です。さっそく私も同様の動作を行ってみました!
▼水分を含ませたセーム革をパンッと張る音(無加工)
なるほど!水分を含ませたことで「軟体らしさ」と「重み」が付加されたような感じでしょうか、肉厚な印象を受ける良いサウンドですね!セーム革はタオルと違ってゴムのような感触があるので、アタックのある音も出やすい印象です。水分を含んだウエット感も音から感じることができ、グロテスクな印象を高めていますね。
素材としてはこの音でバッチリなのですが、映像に合わせるには迫力が足りません。ここでは映像を見た私の印象から下記の加工を足しました。
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録音中に入ったノイズを除去(ノイズ除去方法はこちらの動画で公開中です)
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ディストーションを軽くかけてザラッとした感じを付加
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マルチバンドコンプで低音を強化
▼寄生生物が肉の盾を構える効果音
2.銃弾を肉の盾で受け止める効果音を作る
次に銃弾を肉の盾で受け止める効果音を作ります。映像では複数の警官が一斉射撃を行い、その銃弾を全て盾で受けきるシーンになっています。この映像に対し、小山さんはキャベツの上に水分たっぷりのセーム革をのせて、その上からバタバタッと手で叩く動作をされています。さっそく私も同様の動作を行ってみました!
▼水分を含ませたセーム革をキャベツの上にのせて手で叩く音(無加工)
想像よりも低音が効いていて、迫力のある音が録れました!適度に中身が詰まっているキャベツが良い結果をうんだのかもしれませんね。スイカなどでも良い音がしそうです!ただ、銃弾を受け止めた音としては音がコモリがちなので下記の加工で「バチバチッ」としたニュアンスを出しました。
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録音中に入ったノイズを除去
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ディストーションをかけてザラザラ感を付加
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マルチバンドコンプで高音を強化
▼銃弾を肉の盾で防ぐ効果音
3.肉の盾を振り払う効果音を作る
最後に、銃弾を受け止めた盾を払うシーンです。映像ではかなりキレのある素早い動作で盾を振り払っています。小山さんは、水分を含んだセーム革を色んな持ち方で振り払う動作を繰り返されていました。同様の動作で私も試してみました!
▼水分を含んだセーム革を振りぬく音(無加工)
やはり保水性が高くアタックの強い「バサッ!」とした良いサウンドが得られます!映像はかなりキレがある動作なので、この音に加えて下記の加工を付加しました。
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録音中に入ったノイズを除去
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コンプで音圧アップ
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スピード感を増すために、直前に「空振り音」を付加
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振り払った際に、銃弾がいくつか落ちることを想定して「弾丸の落ちる音」を追加
▼銃弾を受け止めた肉の盾を振り払う効果音
4.寄生獣の1シーンを再現
完成バージョンとしてこれら3つを組み合わせて、
複数の警官が寄生生物へ発砲 ⇒ 寄生生物が肉の盾を構える ⇒ 銃弾を受け止める ⇒ 盾を振り払う
という1シーンを再現します!
▼寄生獣の1シーンを再現
5.まとめ
今回の録音を終えて、グロテスクな演出においてセーム革は"非常に使えるアイテム"だということが分かりました。タオルにはない、
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ゴムのような感触
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保水性
がアタック感やウェット感につながり、効果的なサウンドが得やすいです。ゆっくりこすり合わせたり握ったりすると「グチャッ」としたサウンドも得られるので、ゾンビ系の効果音作りや血の表現にも応用できそうです!
私が購入したものはタオルと同じくらいのサイズで、2000円ほどでした。小山さんが使用されていたものはフロシキぐらいの大きさがあったので、欲を言えばもうすこし大きめのものがあればよかったと思っています。
グロテスクな効果音を作りたいと思っている方は是非購入を検討されてはどうでしょうか?
それではまた来週!
6.オマケ
セーム革と比較してタオルではどのような音になるのか!?
加工なしの録音物をご用意しましたので是非聞き比べてみてくださいね!
▼セーム革を振りぬく音(ドライ)
▼タオルを振りぬく音(ドライ)
▼セーム革を振りぬく音(ウェット)
▼タオルを振りぬく音(ウェット)
▼セーム革をこする音(ドライ)
▼タオルをこする音(ドライ)
▼セーム革をこする音(ウェット)
▼タオルをこする音(ウェット)
効果音メモ
実際に使われるシーンと音作りのギャップが大きいフォーリーは見ているだけでも楽しいですよね!私も以前フォーリーを実演するセミナーに参加したときは、大変刺激を受けたのを覚えています。フォーリーの素晴らしいところは映像に自然な尺、ダイナミクス、タイミングが得られることだと思います。収録済みの効果音素材を切り貼りして映像に当てることももちろんありますが、不自然な流れになったりすることがよくあります。音楽でいうと、ループ素材だけでは人間的な音楽が作りにくいことと似ていますよね。(^^)
OGAWA SOUND:小川
今週の記事はいかがたっだでしょうか?効果音について少しでもご興味や関心を頂ければ大変嬉しく思います。
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それでは来週の「効果音の作り方記事」もお楽しみに!
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